知恵のある叱り方 ~まとめとして~

“経営の神様”として有名な故松下幸之助さんは、人の動かし方、叱り方が絶妙であったということでも有名であるといわれています。それを物語る話しがあります。ある社員がちょっとしたミスをおかしてしまいました。社長の松下さんは、烈火のごとく彼を叱ったそうです。そして、その後その社員の奥様に「今日は少しムシャクシャして帰ると思うので、一本つけといてや」と電話していたそうです。社長から叱責を受けた時は、会社を辞めようとさえ思った社員は、社長の細かい心遣いに触れ、仕事に対する意欲を倍加させていったということです。

 子どもに対する時も同じようなことが言えると思います。まずは、わが子を愛しているがゆえの「叱り」であることです。そのことをどのように子どもに伝えるかです。子どもに分かってもらえる一つが、叱った後のフォローアップです。以前にも申し上げたことではありますが、甘やかすのではなく、甘えさせることが大事です。同じことをしても、親の気持ちが伝わるようなかかわりができると最高ですね。具体的なフォローアップの一つとして、厳しく叱った後に、「あなたはわかってくれると思ったから叱ったのよ」と言ってあげるとか、その夜の食事に子どもの大好物を準備するとか。甘やかしではなく、叱った後でも、「お母さんはあなたの味方なのよ」ということを伝えるためです。子どもにはわかるのではないでしょうか。 叱ったことによって、親子の間にヒビが入るようでは叱った意味がなくなります。難しいことですが、「知恵のある叱り方」があるような気がします。それは、親御さんにしかわからないことではないでしょうか。その中にあって、わたしが申し上げることができる としますと、「叱ったこととは違った別のいい面を評価してあげよう」ということです。たとえば、いたずらが過ぎるお子さんがいたとします。どのような内容のいたずらかは別として、「あなたのいたずらは独特ね」と言って、当面の問題をずらしてみるのです。意外とそれまで気付かなかったお子さまの新たな気質が見えてくるものです。そして、お子さまの中で何かが変わることを期待していくことです。すぐには見えてこないかもしれませんが、確実に何かのいい影響があるはずです。

 子育ては「叱る」ことが本命ではないと思います。幼少のころの子育てで肝心なことは、「自分のお母さんが好きな子」になっていくようにかかわることです。言いたいことは、そのような子が育つなら、その子は決して非行に走る子にはならないということです。補導される子どもたちの中に見られる傾向は、「お母さんなんか大嫌い」という言動です。したがって、子どもに好かれる親になることです。そこに教育の原点があるような気がします。お母さんだけが子育ての責任を担うのではないですが、現実は、お母さんの存在は大きいのです。子どもたちは親の動きをしっかりと見ています。目と耳は抜群にいいのです。それら五感を使って子育てをするに超したことはありません。子どもたちが安心して成長できる環境をこれからも探し求め、時の流れの中で、いつも新しい、確かな子どもとのかかわりを大事にしていきたいものです。

おわり